仙台地方裁判所 昭和４４年（わ）２９６号 判決 1970年9月04日
本店所在地
仙台市立町一番三〇号
株式会社 北杜社
右代表者代表取締役
渡辺篤
（組織変更前
本店所在地
仙台市国分町四四番地
有限会社
北杜社
右代表者代表取締役
渡辺篤）
本籍
仙台市東一番丁一番地
住居
同市小田原裏山本丁三二番地
会社役員
渡辺篤
大正一五年七月二〇日生
右被告人等に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官佐藤安宏出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社北杜社を罰金三五〇万円に、
被告人渡辺篤を懲役六月に
それぞれ処する。
但し、被告人渡辺篤に対し、この裁判確定の日から二年間
右刑の執行を猶予する。
理由
（罪となるべき事実）
被告人会社は、昭和四五年一月一九日有限会社北杜社の組織を変更して株式会社北杜社となつたものであるが、右組織変更前の有限会社北杜社は仙台市国分町四四番地に本店を置き、各種飲食店の経営等を目的とする資本金一〇〇万円の有限会社であり、被告人渡辺篤は被告人会社の代表取締役で、右組織変更前の有限会社北杜社当時も同会社の代表取締役として、その業務全般を統轄していたものであつたところ、被告人渡辺篤は右有限会社北杜社の業務に関し、法人税を免れる目的をもつて、売上の一部を公表帳簿に計上しないで除外し、これによつて得た資金を架空名義または無記名の簿外銀行預金として蓄積するなど不正な方法によつて右有限会社北杜社の所得を秘匿したうえ
第一 昭和四一年三月二六日から同年九月三〇日までの事業年度において、右有限会社北杜社の実際所得金額が九五八万五、八九一円で、これに対する法人税額が三二三万二、二〇〇円であつたのにかかわらず、同年一二月二四日所轄仙台北税務署長に対し、右事業年度の所得金額は一二一万〇、九三六円の欠損で、法人税額はない旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて同有限会社の右事業年度の法人税額三二三万二、二〇〇円をほ脱し、
第二 昭和四一年一〇月一日から同四二年九月三〇日までの事業年度において、右有限会社北杜社の実際所得金額が二、三二二万三、七〇六円で、これに対する法人税額が七八六万四、二〇〇円であつたのにかかわらず、同年一一月二九日、所轄仙台北税務署長に対し、右事業年度の所得金額は四八六万四、〇九九円の欠損で、法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて同有限会社の右事業年度の法人税額七八六万四、二〇〇円をほ脱し、
第三 昭和四二年一〇月一日から同四三年九月三〇日までの事業年度において、右有限会社の実際所得金額が七〇九万〇、四三四円で、これに対する法人税額が二一九万七、一〇〇円であつたのにかかわらず、同年一一月三〇日所轄仙台北税務署長に対し右事業年度の所得金額は九七万五、一六九円で、これに対する法人税額が一九万八、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて同有限会社の右事業年度の実際の法人税額と右申告税額との差額一九九万八、五〇〇円をほ脱し
たものである。
（証拠の標目）
判示全部の事実につき
一、 第二回公判調書中の被告人の供述部分
一、 被告人の当公判廷（第五回公判）における供述
一、 有限会社北杜社の登記簿謄本
一、 株式会社北杜社の登記簿謄本
一、 証人木曽弘達、同高橋将俊の当公判廷における各供述
一、 奥山弘の大蔵事務官に対する昭和四三年一二月六日付（二四問答までのもの）、昭和四四年四月九日付各質問てん末書
一、 奥山弘の検察官に対する供述調書
一、 木曽弘達の大蔵事務官に対する各質問てん末書（二通）
一、 高橋将俊の大蔵事務官に対する昭和四三年一二月七日付質問てん末書
一、 滝田秀雄の大蔵事務官に対する昭和四三年一二月六日付質問てん末書
一、 菊地文雄、菊地徹郎の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、 佐藤時治郎の大蔵事務官に対する各質問てん末書（二通）
一、 佐々木嘉夫の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、 佐々木嘉夫の上申書
一、 大蔵事務官川口正意作成の銀行調査書類
一、 大蔵事務官川口正意作成の仕入除外の調査書
一、 大蔵事務官川口正意作成の売上除外の調査書
一、 大蔵事務官川口正意作成の簿外預金および受取利息等の調査書
一、 被告人渡辺篤の大蔵事務官に対する昭和四三年一二月六日付同月一八日付、昭和四四年三月三日付、同月四日付、同月一一日付、同月一二日付、同年四月一一日付（一〇問答までのもの）、同年五月二日付（一九問答までのもの）、同月八日付（一七問答までのもの）、同月二六日付（八問答までのもの二通）、同月二七日付（二問答までのもの一通、三問答までのもの二通、一〇問答までのもの一通計四通）各質問てん末書
一、 被告人渡辺篤の検察官に対する供述調書二通
一、 被告人渡辺篤の上申書七通
一、 押収にかかるメモ一綴（二四枚）（昭和四四年押第一〇八号の七三）
一、 同預金者名簿帳（三枚）（同号の九六）
一、 同無記名定期予金名寄帳一綴（同号の九七）
一、 同売掛帳四綴（同号の一〇五ないし一〇八）
判示第一の事実につき
一、 被告人の当公判廷（第七回公判）における供述
一、 奥山弘の大蔵事務官に対する昭和四三年一二月六日付（九問答までのもの）、昭和四四年四月三日付各質問てん末書
一、 菊地徹郎の上申書（昭和四一年九月期の決算修正仕訳について）
一、 高城譲、沼田哲夫、古川実（二通）、鈴木富治の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、 桜井智代、高浜昌義、小山和夫の各上申書
一、 大蔵事務官川口正意作成の脱税額計算書（自昭和四一年三月二六日至昭和四一年九月三〇日）
一、 自昭和四一年三月二六日至同年九月三〇日事業年度分の修正申告書（謄本）
一、 被告人渡辺篤の大蔵事務官に対する昭和四四年三月一八日付、同年四月四日付、同年五月二日付（二問答までのもの）、同月八日付（九問答までのもの）、同月九日付（二問答までのもの）、同月二六日付（三問答までのもの）、同月二七日付（五問答までのもの）、各質問てん末書
一、 押収にかかる売上仕入経費月計表一綴自昭和四一年一〇月至昭和四二年九月（昭和四四年押第一〇八号の一）
一、 同 同一綴自昭和四二年一〇月至昭和四三年九月（同号の二）
一、 同 同一綴自昭和四三年一〇月一日至同年一一月三〇日（同号の三）
一、 同 法人税確定申告書一綴自昭和四一年三月二六日至昭和四一年九月三〇日（同号の四）
一、 同 元帳五綴（同号の二〇の一ないし三、二一、二二）
一、 同 補助簿七綴（同号の四五の一、二、四六ないし四八、四九の一、二）
一、 同 仕入日計表（八五枚）一綴（同号の七七）
一、 同 レシート（一四袋）一綴（同号の八〇）
一、 同 加算機テープ（二五袋）一綴（同号の八一）
一、 同 買掛金等残高明細（一五〇枚）一綴（同号の八七）
一、 同 第九期売掛元帳一冊（同号の一〇〇）
一、 同 第一〇期得意先元帳二冊（同号の一〇一、一〇二）
一、 同 受領書綴一綴（同号の一〇三）
判示第二の事実につき
一、 高橋将俊の大蔵事務官に対する昭和四四年三月一三日付質問てん末書
一、 滝田秀雄の大蔵事務官に対する昭和四四年五月二七日付質問てん末書
一、 佐藤正の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、 沼田哲夫、古川実（二通）、横川幸子、小山和夫、刀根宏一の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、 桜井智代、横川幸子の各上申書
一、 大蔵事務官川口正意作成の脱税額計算書（自昭和四一年一〇月一日至昭和四二年九月三〇日）
一、 自昭和四一年一〇月一日至昭和四二年九月三〇日事業年度分の修正申告書（謄本）
一、 被告人渡辺篤の大蔵事務官に対する昭和四四年一月九日付、同年四月一一日付（一三問答までのもの）、同年五月二日付（二問答までのもの）、同月二七日付（一一問答までのもの）各質問てん末書
一、 前掲押収にかかる売上仕入経費月計表一綴自昭和四一年一〇月至昭和四二年九月（昭和四四年押第一〇八号の一）
一、 同 法人税確定申告書一綴自昭和四一年一〇月一日至昭和四二年九月三〇日（同号の五）
一、 同 元帳二綴（同号の一二の一、二）
一、 同 元帳一綴（同号の一七）
一、 同 元帳三一綴（同号の二三の一ないし一六、二四、二五、二六の一ないし八、二七ないし三一）
一、 同 補助簿三四綴（同号の五〇、五一、五二の一、二、五三、五四、五五の一ないし六、五六の一ないし四、五七の一ないし三、五八の一ないし一五）
一、 前掲同メモ（二四枚）一綴（同号の七九）
一、 同 種目別試算表資料（二八二枚）一綴（同号の八八）
一、 同 源泉徴収簿一冊（同号の八九）
一、 前掲同第九期売掛元帳一冊（同号の一〇〇）
一、 前掲同第一〇期得意先元帳二冊（同号の一〇一、一〇二）
一、 前掲同受領書綴一綴（同号の一〇三）
一、 同 売掛帳一綴（同号の一〇四）
判示第三の事実につき
一、 奥山弘の大蔵事務官に対する昭和四三年一二月一〇日付質問てん末書
一、 前掲滝田秀雄（昭和四四年五月二七日付）、佐藤正の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、 菊地徹郎の上申書（昭和四三年九月期の決算修正仕訳について）
一、 刀根宏一の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、 大蔵事務官川口正意作成の脱税額計算書（自昭和四二年一〇月一日至昭和四三年九月三〇日）
一、 自昭和四二年一〇月一日至昭和四三年九月三〇日事業年度分の修正申告書（謄本）
一、 被告人渡辺篤の大蔵事務官に対する昭和四三年一二月七日付、昭和四四年一月九日付、同年四月七日付、同月一一日（一三問答までのもの）、同年五月二日付（一六問答までのものと四問答までのもの各一通）、同月二七日付（一一問答までのもの）各質問てん末書
一、 前掲押収にかかる売上仕入経費月計表一綴昭和四二年一〇月至昭和四三年九月（昭和四四年押第一〇八号の二）
一、 同法人税確定申告書一綴自昭和四二年一〇月一日至昭和四三年九月三〇日（同号の六）
一、 前掲同元帳二綴（同号の一二の一、二）
一、 同 元帳二綴（同号の一五の一、二）
一、 同 元帳五三綴（同号の三二の一ないし二四、三三、三四、三五の一ないし一二、三六、三七、三八の一ないし五、三九ないし四二、四三の一ないし三、四四）
一、 同 補助簿四七綴（同号の五九ないし六四、六五の一ないし五、六六の一ないし四、六七の一ないし五、六八の一ないし五、六九ないし七三、七四の一ないし一七）
一、 同 請求書、領収書綴（九五枚）一綴（同号の八二）
一、 前掲同源泉徴収簿一冊（同号の八九）
一、 同 出納簿現金内訳一冊（同号の九二）
一、 同 日記兼用家計簿（昭和四三年度）一冊（同号の九五）
一、 同 決算資料（六一枚）一綴（同号の九八）
（法令の適用）
被告人渡辺篤の判示第一ないし第三の各所為はいずれも法人税法第一五九条第一項、第七四条第一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第一〇条により犯情の最も重いと認める判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で被告人渡辺篤を懲役六月に処し、諸般の情状により刑の執行を猶予するのを相当と認めるので、同法第二五条第一項第一号により本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。
被告人株式会社北杜社については、その組織変更前の有限会社北杜社の当時の代表者であつた被告人渡辺篤が同有限会社の業務に関し判示第一ないし第三の違反行為をしたものであるから、いずれも法人税法第一六四条第一項、第一五九条第一項、第七四条第一項に該当し、以上は刑法第四五条前段の併合罪なので、同法第四八条第二項により各罪につき定めた罰金の多額を合算した金額の範囲内で被告人株式会社北杜社を罰金三五〇万円に処すこととする。
よつて、主文のとおり判決する。
（裁判官 杉本正雄）